自動車保険には等級制度というものがあります。
等級が上がるほど、保険料は下がる仕組みになっているということはご存知の方も多いかと思います。
では、保険料を安くするために等級を上げるには何をしたらいいのでしょうか?
等級が上がればどの程度保険料が変わってくるのでしょうか?
このような疑問にお答えします。
この記事では、自動車保険の等級が上下する仕組みと保険料との関係性について詳しく解説していきます。
ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
自動車保険の等級とは
等級制度(ノンフリート等級別料率制度)とは、前契約の有無や、前契約の事故の件数・種類等により、次契約に適用する等級(1~20等級)と割増引率が決定され、保険料を割引・割増する制度です。
等級は1等級から20等級まであり、20等級が一番保険料が安くなります。
初めて車を保有するなど、今まで自動車保険に入ったことがない場合は、原則として6等級が適用になります。
2台目のお車を購入したときや、同居している子どもが車を購入したときなどで一定の条件を満たしたときは、セカンドカー割引が適用され、7等級から始まることとなります。
つぎの年の自動車保険の更新時に等級は変わります。1年間無事故のときは、翌年の等級は1つ上がります。
なお、20等級の場合は既に上限なので、1年間事故なく保険を使うことがなかったときは翌年も20等級です。
自動車保険の等級の調べ方
現在加入している自動車保険の等級を確認するには、以下の3つの方法があります。
保険証券を確認
加入している保険会社から毎年送られてくる「保険証券」には、保険契約の内容、給付金の支払い条件、契約期間、満期日、等級などが記載されています。
保険会社のホームページで契約内容を確認
等級の確認は、加入する保険会社のホームページ上でも可能です。
自分のページにログインすれば、契約内容などの詳細が確認できます。
保険会社に電話で問い合わせる
加入している保険会社に電話すれば、さまざまな情報を確認することが可能です。
自動車保険の等級の確認もできます。
等級も個人情報なので、本人かどうかを確認するために現住所、生年月日などを尋ねられます。
自動車保険の等級が上下する仕組み
等級が上がるケース
それではつぎに、保険の等級が上がる具体的な条件について説明していきましょう。
等級は事故の履歴によって決められ、等級によって保険料の割引率が変わります。
割引率の変化については後述します。
この仕組みは、1年間事故なく保険を使わなければ、つぎの年度に1つ等級が上がります。基本的に等級が高くなれば割引率も上がっていきます。
順調に事故を起こしさえしなければ等級が上がり、それに合わせて保険料の割引率も上がります。
等級が下がるケース
しかし、事故を起こして自動車保険を利用して保険金を受け取ると等級は下がります。
たとえば、人身事故や物損事故を起こしたときなどは3等級下がります。
等級が下がるケースについて詳しく説明していきましょう。
保険金を受け取るとつぎの年度の保険料に影響する
事故起こして保険を利用したときは等級が下がるので、等級が下がった分つぎの年度の保険料は上がってしまいます。
また事故を起こすと「事故あり等級」とされ、事故がないときよりも割引率が下がるのです。
つまり保険を利用すると、等級が下がることにくわえて、割引率も同時に下がることになります。
そのため、保険料の支払いが二重に厳しくなってしまうのです。
等級が下がる事故の種類
等級が下がる事故は2つに分けられます。「1等級ダウン事故」と「3等級ダウン事故」です。
1等級ダウン事故の例
事故が起きたときに、1件についてつぎの年度の契約の等級が1等級下がる事故のことをいいます。
1等級ダウン事故を起こすと、等級が下がり、事故あり係数が適用されるため、翌年の保険料は上がります。
例えば、以下の原因による事故で車両保険を利用したときは、1等級ダウン事故となります。
- 盗難に遭ったとき
- 台風などで水災に遭ったとき
- 台風で飛んできた看板が自動車に当たったとき
- 自動車がいたずらに遭ったとき
- 自動車が飛び石で傷ついたとき
3等級ダウン事故の例
1等級ダウン事故とノーカウント事故(後述します)に当てはまらないすべての事故が3等級ダウン事故となります。
基本的に車をぶつけたなどの事故を起こしてしまったら、3等級下がると思うとよいでしょう。
例えば、以下の原因による事故で保険を利用したときは、3等級ダウン事故となります。
- ほかの車と衝突し、自分の車を修理したとき
- 当て逃げによって自分の車が破損し、修理したとき
- 車を電柱にぶつけ、自分の車を修理したとき
- 車で他人に衝突してケガを負わせたとき
- 建物に車をぶつけたとき
なお、1件の事故で複数の補償項目を利用しても等級が下がるのは3等級のみです。
自動車保険の各等級の割引率
割引率表
自動車保険の各等級ごとの割増引率は、以下の表の通りです。
20等級の割引率は、事故なしのときは-63%、事故ありのときは-44%となっています。
なお、保険会社によって異なるケースがありますので、詳細は契約する保険会社確認してみてください。
事故なし | 事故あり | |
20等級 | -63% | -44% |
19等級 | -55% | -42% |
18等級 | -54% | -40% |
17等級 | -53% | -38% |
16等級 | -52% | -36% |
15等級 | -51% | -33% |
14等級 | -50% | -31% |
13等級 | -49% | -29% |
12等級 | -48% | -27% |
11等級 | -47% | -25% |
10等級 | -45% | -23% |
9等級 | -43% | -22% |
8等級 | -40% | -21% |
7等級 | -30% | -20% |
6等級 | -19% | -19% |
5等級 | -13% | -13% |
4等級 | -2% | -2% |
3等級 | 12% | 12% |
2等級 | 28% | 28% |
1等級 | 64% | 64% |
「事故あり」「事故なし」とは
上記の表では、同じ等級でも「事故あり」と「事故なし」で割引率が異なっています。
自動車保険には等級以外に「事故有係数適用期間」というものがあり、「事故有係数適用期間」が0年のときは事故なしの割引率を、1年以上のときは事故ありの割引率を用います。
「事故有係数適用期間」は、前の年の契約で事故を起こしてしまった契約者と起こさなかった契約者を比べたときに、事故を起こしてしまった契約者の方がリスクが高い傾向にあったため、これを是正する目的で導入されました。
3等級ダウン事故を起こせば3年、1等級ダウン事故を起こせば1年加算され、1年ごとに1年減算されます。「事故有係数適用期間」の上限は6年で下限は0年です。
等級が変化しない事故
じつは保険を利用しても等級が変化しない事故があります。
これを「ノーカウント事故」といいます。
ノーカウント事故に当てはまるケースは「契約者の危険度を直接的に示すものではない」とみなされたときです。下記に事故例を示します。
ノーカウント事故例1
契約車両を運転中、急ブレーキをかけなければいけなくなり、顔がハンドルにぶつかってケガをし、保険金の支払いを受けた。
支払われた保険の種類:搭乗者傷害保険
ノーカウント事故例2
契約車両を運転中、他車に追突されケガを負ったが、相手は無保険車で相手の保険から補償を受けることができず、自分の保険金の支払いを受けた。
支払われた保険の種類:人身傷害補償保険
なぜノーカウント事故が存在するのか
保険金を受け取っていても等級に影響がないのは、不公平のように思えます。
しかし、これらの上記の例は、被保険者の責任を問わない保険とみなされます。
そのため、等級に影響がないノーカウント事故という扱いになります。
なお、保険会社によっては、提供しているロードサービスなどの利用もノーカウント事故の対象になるケースがあります。
細かな点は保険会社によって違いがあるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
自動車保険の等級は引継ぎが可能
自動車保険の等級は、条件を満たせば、自分自身もしくは家族・親族間で引継ぎが可能です。
高い等級を引き継げば、保険料の割引率も高くなり、自動車保険料がリーズナブルになります。
ここでは、等級を引き継ぐことができるケース・できないケースをそれぞれ紹介します。
等級の引継ぎができるケース
家族同士での引き継ぎ
配偶者(内縁含む)、同居の子ども・親・親戚・孫、配偶者と同居の親族の続柄であれば、家族間で等級を引き継ぐことができます。
たとえば、親の等級を子どもが引き継いで、親が新規に保険に加入すると、保険料はトータルで安くなります。
個人契約から法人契約へ切り替えたとき
一定の条件を満たし、被保険者を変更することで個人から法人へ等級の引継ぎが可能です。
ただし、法人契約を行っていない保険会社の場合は、個人から法人への契約変更すること自体ができないため、等級の引継ぎもできません。
保険会社を乗り換えるとき
保険会社を乗り換えるとき、一部共済を除き、これまでの等級をそのまま引き継ぐことができます。
自動車保険の等級情報交換制度とは
上記の制度とは、自動車保険を契約した保険会社を変更したときであっても旧契約の等級が正しく継承されるように、保険会社間で確認を行っている制度です。
契約を更新する保険会社が前の年と同じであれば、その保険会社の中で契約者の旧契約の等級(事故の発生の有無・件数など)を確認することで、等級を正しく継承することができます。
しかし、保険会社を変更したときには、等級の正しい適用状況が把握できず、旧契約の保険会社に確認を行う必要があります。
こうした情報の確認を円滑に行い、契約者間の保険料負担の公平性を確保することを目的として、保険会社だけでなく共済組合も参画した制度を運営しています。
等級の引継ぎができないケース
2台目の車
現在保険に加入している車とは別に新しく車を購入したときは、等級の引継ぎができません。自動車保険を新たに契約する必要があります。
自動車とバイク
自動車とバイクとでは、事故の発生リスクも異なるため、等級の引継ぎはできません。
保険会社から契約解除されたとき
保険料の滞納などの問題があり、保険会社より契約を解除されたときは、等級を引き継ぐことができません。
等級を引き継ぐときに注意すること
等級を引き継ぐときに、注意すべきポイントについて紹介します。
旧保険会社の解約を確認する
旧契約の自動車保険の更新が自動更新になっているケースは注意が必要です。
新しい保険会社に契約して、保険を切り替えたつもりになっていても、以前の契約が継続していることがあります。
満期日のタイミングで自動車保険の乗り換えを考えているときは、旧保険会社に次回は更新しないということを、しっかり連絡するようにしましょう。
旧契約から新契約まで日数を空けない
自動車保険の等級を間違いなく引き継ぐためには、旧契約の満期日(解約日)と新契約の開始日までの期間が、7日以内である必要があります。
万が一空白期間が8日以上になってしまうと、等級は6等級にリセットされてしまうため注意しましょう。
任意保険の無保険期間がないようにする
上述したように等級の引継ぎについては、旧契約から新契約まで7日間の猶予期間があります。
それ以上に大事なことは、任意保険の無保険期間がないようにすることです。
旧契約と新契約との間が空くと、自賠責保険のみの期間ができてしまう点に注意が必要です。
万が一、空白期間に事故が発生すれば、充分な補償が受けられない可能性があります。
また自賠責保険を乗り換えるときには、旧契約から新契約までの間を空けないようにしましょう。
まとめ:事故を起こさないようにしましょう!
この記事では自動車保険の等級について詳しく解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
事故を起こしたり、事故を起こされたりしたとき「保険料が上がってしまうから」といって保険会社に連絡しない人もいるようです。
ですが、つぎの年度の等級が下がるかどうか、保険料が上がるかどうかは、事故の有無ではなく、その内容によって異なります。
万が一の事故のときには、警察はもちろんのこと、保険会社にも必ず事故報告を入れておきましょう。
保険を使うかどうかは、保険会社や代理店に相談したあとで判断すればよいことです。
「安全運転を心掛けること」、これが何より一番大切なことではないでしょうか。